――この回はIFルートなので本編の進行とは無関係です。また、残虐表現、グロテスクな表現が含まれます。見たくない方は次のページへ進んで下さい。――

ライナスはマティアス司令官を生き別れの兄と主張。しかし、記憶喪失のマティアス司令官にはそれが真実か確かめる術がない。
マティアス司令官はライナスの主張を信じるのか? 彼が下した決断は――。
「いい加減にしろ。そんな嘘が私に通用するとでも思っているのか」
マティアス司令官はライナスの良い分を信じなかった。その表情は感動の再会を果たした弟へ向ける眼差しとは程遠い、極めて冷酷なものだった。
「嘘じゃない! 信じてくれ!」
「数々の悪事を積み重ねてきただけでは無く、今度は私を騙してくれるとはな。お前の実力を高く評価しているからこそ軍に入れてやるつもりだったが、更生の余地が無い悪党に手を差し伸べるつもりは無い!」
「いや、だから嘘じゃねぇって!」
「これからお前の身柄をハンニバルに引き渡す。今までの行いを悔いながら死ね!」
ライナスは自分の主張が嘘では無いと必死に訴えるが、マティアス司令官にその想いは届かなかった。
マティアス司令官はライナスの身柄を拘束し、ハンニバル中将が管理する拷問部屋へと移動させた。
ここは鉄製の壁で覆われた薄暗い部屋。部屋にはキッチン、調理器具、棚、テーブル、そして拷問用の鉄製ベッドと椅子が設置されている。
ライナスは拷問用の鉄製ベッドの上で拘束された。
「マティアス、本当に良いんだな?」
「私を知っていると言うから期待していたが、どうやら人違いだったようだ。――ハンニバル、後はお前の好きにしろ」
マティアス司令官はそう言い残し部屋を去っていく。
ライナスが「兄貴! 待ってくれ!」と声を掛けるも、マティアス司令官は振り向くことすら無く退室した。
その後、ハンニバル中将が鉄製ベッドの上で拘束されているライナスを嗜虐的な笑みを浮かべながら見下ろす。
しかし、ハンニバル中将はライナスを攻撃するどころか、拘束具を解除してライナスが自由に身動きできる状態にした。
「……どういうつもりだ?」
「ただ殺すだけじゃつまらねぇ。お前の自慢の武器でこの俺に傷を負わせることができれば、お前に生きるチャンスをやるぜ」
「本当か!? ありがてぇ……」
ハンニバル中将は没収していたライナスの武器全てを持ち主へ返す。
ライナスは今までの中で特段威力の高い銃弾をショットガンに補充し、ハンニバル中将へ銃口を向ける。
「後悔するなよ?」
「さっさと撃て」
ライナスは数発の銃弾をハンニバル中将へ向けて撃ち込んだ。ハンニバル中将へ直撃と同時に銃弾は爆発を起こし、部屋中に煙と爆音が鳴り響く。
しかし、この部屋はどんな衝撃や轟音も打ち消す特殊素材でできている為、部屋の外へ騒音が鳴り響くことは無かった。
数秒後、煙が収まったその先に見えたのは……無傷のハンニバル中将の姿だった。
「俺の特性バレルの直撃を受けても無傷だと……!? こいつ、化け物か!?」
「なんだ、つまんねーな。マティアスがお前の実力を買おうとしてたから期待してたのによ。――じゃ、そろそろ始めるか」
ハンニバル中将はライナスを乱暴につかみ、鉄製ベッドへ仰向けに叩きつけた後、ライナスの手足を拘束した。
「ぐあっ! や、やめてくれ!」
「どうだ? これから処刑される気分は」
ハンニバル中将の表情はこれから獲物を貪り食おうとする獣のようだった。
「俺は……死ぬのか?」
「そうだ、てめぇは死ぬんだよ。今までてめぇが殺してきた無抵抗の人間たちと同じようにな!」
「嫌だ! 助けてくれ!!」
「助けてくれだと? てめぇは今までそうやって命乞いをしてきた人間を助けたことがあんのか?」
「……!」
その時、ライナスは今まで自分が行ってきた悪行の数々を思い出した。
生きるために強盗や殺人を重ね、時には無抵抗の女子供を手にかけることもあった。
今まで自分がしてきたことが、今ここで返ってきているのだと痛感する。
(そうか、やっぱり俺が今までしてきたことは許されることじゃねーな。死んで償うしか無いのか。でも……せめて兄貴には信じてもらいたかった……)
ライナスは自分が処刑されることよりも、やっと会えた生き別れの兄に信じてもらえず、冷淡に見捨てられたことを深く悲しんだ。
「生まれて来たことを後悔するくらいたっぷり痛めつけてやるから覚悟しとけよ?」
ハンニバル中将は嗜虐的な笑みを浮かべながら、部屋の隅に置かれた拷問器具の数々を物色する。
「さて、どれから試してやろうかねぇ。お前みたいなクズは、せめて死ぬ前に役に立ってもらわねぇとな」
手に取ったのは一本の錆びついたナイフ。刃先には乾いた血がこびりつき、不気味な光を放っていた。
「やめろ! やめてくれ!」
ライナスは必死にもがくが、手足を拘束された状態ではどうすることもできない。ハンニバル中将はニヤリと笑いながら、ライナスの頬をナイフの背で撫でた。
「おいおい、せっかくの楽しみを台無しにするなよ? お前が今まで奪ってきた命も、きっとこんな風に震えながら助けを求めたんだろうなぁ」
そう言うと、ハンニバル中将はライナスの指を一本ずつ掴み、関節を逆方向に折り曲げ始めた。
「ぎゃあああああっ!!」
部屋中に響き渡る絶叫。しかし、この部屋の防音設備がそれを外へ漏らすことはなかった。
「ククク……良い声出してくれるじゃねーか」
ハンニバル中将は舌なめずりをしながら、ライナスの手のひらにナイフを突き立てた。刃が皮膚を裂き、赤黒い血が鉄製のベッドに滴る。
「ぐあっ!」
「おっと、気絶すんじゃねぇぞ? まだ始まったばかりだからな」
ハンニバル中将は焼けた鉄棒を取り出し、ライナスの胸に押し付けた。肉が焦げる音とともに、焼ける臭いが部屋に充満する。
「ぎゃあああああああああっ!!」
もはや言葉にならない悲鳴が響き渡る。
「お前がどんなに後悔しても、もう遅いんだよ。せめて死ぬ前に、己の罪を思い知るんだな」
ハンニバル中将は両手から長く鋭い鉤爪を生やし、ライナスを一方的にいたぶり引き裂いていく。
ライナスの身体からは大量の鮮血が飛び散るが、彼にはもう声を上げる気力すら残っていなかった。
やがてライナスは四肢をもぎ取られ、彼の瞳が最後に虚ろに震えた後、完全に動かなくなってしまった。
「チッ、思ったよりもあっけねぇな……。さて、マティアスに報告するか」
ハンニバル中将は携帯機でマティアス司令官と連絡を取り、結果を報告する。しばらくするとマティアス司令官が再び拷問部屋に入ってきた。
「よくやった、ハンニバル」
「ライナスの野郎はたっぷりいたぶって殺してやったぜ」
並みの軍人では直視することすらできないであろうおぞましい光景。しかし、マティアス司令官は冷静な表情でライナスの無残な死体を見下ろす。
(ライナス、お前と私は本当に兄弟だったのかも知れない。だが、そんな私情でお前がしてきた数々の悪事を許すわけにはいかん。私は人の兄弟である以前に1人の軍人だ)
マティアス司令官はライナスが自分の実の弟であることを薄々感じていた。それを承知の上で、兄弟との感動の再会よりも、軍の責務を全うする道を選んだのだ。
「どうした、マティアス。まさかライナスに未練があるんじゃねーだろうな?」
「フン、まさかな。そいつの死体処理は任せたぞ」
このあとハンニバル中将がおいしくいただきました。
――GAME OVER――