
今回はエーリッヒ大佐、ハイド伍長、俺、レイさんのパーティ視点に戻るぜ。
俺たちがゴリアテを調教してしばらく経った後、エーリッヒ大佐とハイド伍長の携帯機に連絡が入ってきた。
ナイト軍曹、ミカエル、ヨウスケの部隊がライナスに打ち勝ち、奴を捕らえたとのことだ。
「さすがブラザー! 強さだけは半端ないぜ!」
「ナイト軍曹だけじゃない。ミカエル君とヨウスケ君もよく頑張ったよ」
「あいつらならライナスに負けないって信じてたぜぇ~」
「早いとこ合流しようぜ!」
俺たちはナイト軍曹から送信された位置情報を元に現場へ向かう。
そこには激戦を繰り広げたであろう姿のナイト軍曹、ミカエル、ヨウスケ、そして身柄を拘束されたライナスの姿があった。
「ライナスを撃破したようだね」
「ブラザー! 俺たちは無法者の親玉を潰してきたぜ!」
「お前らも無事で良かったぜぇ~」
「親玉の無様な姿をお前らにも見せてやりたかったな!」
「エーリッヒ大佐、ハイド伍長、タツヤ、レイ!」
「みんな無事で良かったよ!」
再会の喜びを分かち合う俺たち。ちょうどその時、ハンニバル中将も背後から俺たちと合流してきた。ハンニバル中将もナイト軍曹からの連絡を受け取っていたのだろう。
「やっと見つけたぜ。無法者どもも雑魚ばかりだったな」
「ハンニバル中将! 無事だったんだね!」
「当たり前だ。親玉の片割れっぽい奴と戦ったが、まるで相手にならねぇ。ちょっと人助けをしていて到着が遅れちまったぜ」
「ファッ!? 親玉ってもう一人いたのかよォ!?」
エーリッヒ大佐とハイド伍長が同行してもなお苦戦した、無法者の親玉ゴリアテ。そのゴリアテの片割れをたった1人で倒し、しかも「相手にならねぇ」だとォ!?
この任務、やっぱりハンニバル中将1人で十分だったのじゃないか……?
その後、ナイト軍曹がご機嫌な様子で俺とレイさんに話しかける。
「タツヤ、レイ! お前ら、ちょうど良いところに来てくれたな!」
「ん? 何何?」
「タツヤ、レイ。この男を好きにして良いぞ」
さすがナイト軍曹。分かってるじゃねーか!
「いよいよ俺らの出番だな!」
「この瞬間を待ってたぜえぇぇぇ!!」
「よーし! ミカエル、ヨウスケ、カメラを構えろ!」
「あぁ。今までやられてきた仕返しをする時だ」
「ライナス! 今から調教生配信してやるからね!」
「な、なんだと!?」
今から調教生配信されると聞いて驚くライナス。俺たちの目の前に2本の木柱が立っている。
俺たちはその2本の木柱の間にライナスの手足をロープで縛りつけ、身動きを取れないようにした。
「おい、てめぇら! 何をするつもりだ!?」
「よう、アウトローのおっさん! これからたっぷり罪を償ってもらうぜぇ~。今からお前の調教シーンをネットで生配信して、後でビデオを販売してやるからなぁ~? あ、当然お前はノーギャラだからな。犯罪者だからタダ働きは当たり前だよなぁ~?」
「クソがっ! 好き勝手ほざきやがって!」
「安心しろ。失神するまでで許してやる。な? じゃあレイさんよろしくお願いします!」
「いくよ~!」
鞭を握ったレイさんが、スパンッ! スパンッ! と、力強くライナスを鞭打つ。
「痛えぇ!」
「鞭痛いのは分かってんだよおいオラァ! YO!」
「YO!」
レイさんのYO! に便乗してナイト軍曹もYO! と、ライナスを鞭打つ。
「てめぇまでどさくさに紛れて鞭打ってんじゃねーよ!」
怒りの表情で声を上げるライナス。
「エーリッヒ大佐もライナスにやられてたよなぁ? 今ここで仕返しをしてやろうぜ~」
俺がエーリッヒ大佐にライナスへの仕返しを持ちかけると、エーリッヒ大佐は笑顔でライナスに近づいた。
「ライナス、雪山で私を襲撃したことを忘れてはいないだろうな?」
「……!」
「あの時の借りはここで返させてもらうよ」
エーリッヒ大佐はお供ロボを使って必殺技を発動。巨大な電撃がライナスを襲い、ライナスは「ぐああああああ!」と悲鳴を上げる。
「これでリベンジを果たせたな!」
傍で見ていたハイド伍長もご満悦の様子だ。
次にレイさんはロウソクに火をつけ、それをライナスの目の前に近づける。
「これなんだこれ? 何だか分からない? これ? 何だか分かるこれ? ロウソク」
「てめぇ、今度は何する気だ!?」
「お前のその綺麗な髪を焼き尽くしてやるんだよ!」
レイさんがライナスの髪へロウソクの火を近づける。すると、ライナスの髪に着火し始めた!
「あちぃ! ふざけんなてめぇ!」
「ロウが少し垂れただけだロウ?」
レイさんは更にロウソクの火でライナスの髪を燃やしていく。
「てめぇ……絶対にぶっ殺してやる……!」
「あぁ!? てめぇ今なんつった!? もういっぺん言ってみろ!」
「絶対にぶっ殺してやる!」
無抵抗の状態にも関わらず「ぶっ殺してやる!」と怒りの声を上げるライナス。
「こいつ、今の自分の状況分かって無ぇみたいだなぁ~?」
「いくよ~! 5、4、3、2……」
レイさんがカウントダウンを開始。そして勢いよく燃え上がった炎がライナスの髪を一部黒焦げにした。
「ぐあぁ! 髪が黒焦げになっちまったじゃねーか!」
「あー良い色に染まったなぁ……」
その頃、生配信の視聴者たちは――。
とある学校の教室では女子高生たちがスマホを見て盛り上がっていた。
「ねぇ、見てみて! 凄い動画が流れてきたよ! 指名手配中のオッサンが捕まって変なことされてるの!」
「なにこれ (笑)。捕まえた人たちグッジョブじゃん!」
とあるオフィス内では若い男の会社員がパソコンで動画を見ていた。
「うは! (笑)。これは流行る (確信)。じゃけんさっそくBB素材作りましょうね~。『調教されるLNS兄貴BB.mp4』 ……投稿完了♪」
どこかにある魔王城別館の中では、魔王の双子の弟がパソコンの画面前で困惑していた。
「何だこの生配信は……たまげたなぁ……。それにしても兄者、遅いな。せっかく兄者の好きそうな『悶絶少年』最新作を買ったのに」
とある公園では、男の子がスマホを見ながら母親と会話していた。
「ねーママ! 僕ね、大きくなったら”ちょーきょーし”になりたいなー! ちょーきょーしの人がね、悪いおじさんにお仕置きしてるの! 凄いでしょ!?」
「やめなさい! そんなもの見ちゃ駄目!」
ソフトクリーム島の教会内では、神父がノートパソコンを開いて楽しそうに動画を見ていた。
「タツヤ君たち、元気そうだね。この間の『悶絶少年』もなかなか面白かったし、この生配信もなかなか迫真の演技だ」
とある老夫婦の家では、おじいさんがノートパソコンを開いて楽しそうに動画を見ていた。
「ほっほっほ! これが今流行りの”ほもび”というやつかえ? 若いというのは良いものじゃな~!」
――こんな感じで、ライナスの調教生配信は多くの視聴者に届いていったのであった。
「ホラホラ、動画にいっぱいコメント来てるぜ~。お前も有名人になれてよかったなぁ~?」
「クソがっ! 軍人どもも黙って見てんじゃねーぞ!」
しかしこいつ、なかなか堕ちねーな。強い奴は調教難易度が高いぜ。
このライナス調教生配信を終始無言、退屈そうな表情で眺めている男が1人だけいた。ハンニバル中将だ。
ハンニバル中将は性的なものを知らないピュアな心の持ち主だ。目の前で何が起こっているのかすら把握していないようにも見える。
「おい、そろそろ終わりで良いだろ」
「ファッ!? 今、良いところなのに!」
「空をよく見ろ。もう日が暮れてるだろ。暗くなる前にさっさと終わらせるぞ」
空気を読まないハンニバル中将はライナスを死なない程度にボコって気絶させた。ホモはせっかち。
「もうちょっと楽しみたかったぜ……」
「でも、もう遅いから続きはまた今度やればいいじゃん」
「ライナスの身は俺が運ぶぜ。それでは撤収だ!」
ハンニバル中将が気絶したライナスを右肩に担いで運び、俺たち全員は荒野の無法地帯を後にした。