第47話 無法者の親玉を調教する!

 エーリッヒ大佐が目を細め、冷静に敵を分析する。ゴリアテは遺伝子操作を受けた強化人間ミュータントであることを、エーリッヒ大佐は見抜いた。
 そして、ゴリアテが構えている巨大な大剣はただの大剣ではない。大剣の内部には機械式装置が仕組まれていることを、エーリッヒ大佐のお供ロボが検知したのだ。
 エーリッヒ大佐はその旨を俺たちへ手短に説明した。

「奴と近接戦闘で殴り合うのは無謀だ。距離を置こう」
「かしこまり!」

 エーリッヒ大佐が指示を出し、俺たちは散開してゴリアテから距離を取る。

「貴様ら軍人ごときに俺を止められると思うなよ!」

 ゴリアテが大剣を軽々と横に振る。すると、刃先から炎の衝撃波が発生し、エーリッヒ大佐の元へ迫ってきた!

「マジックシールド!」

 エーリッヒ大佐はお供ロボに指示を出し、ホログラムのバリアを展開した。
 炎の衝撃波はバリアに触れると同時に爆発。バリアは消滅し、エーリッヒ大佐は後方へ吹っ飛んでしまった。

「くっ……! 駄目か」

 マジックシールドのおかげでエーリッヒ大佐へのダメージは軽減できたようだ。
 エーリッヒ大佐はすぐに体勢を立て直し、お供ロボへ指示を出す。すると、俺たち全員のパワーがみなぎってきたぜ!
 エーリッヒ大佐はヨウスケ同様、味方を強化する技も持っているようだ。心強いぜ。

「よし、攻撃を叩き込むぜ。タツヤ、レイ、奴の動きを封じられるか?」
「かしこまり!」
「やれるか分かんねーけどやってみるどー!」

 俺はゴリアテの右腕にムチを伸ばし、巻き付けて縛り上げる。
 レイさんはムチが巻き付いてるゴリアテの右腕目掛けて竹刀を振り下ろす!

「誰が剣から炎出していいっつったオイオラァ!」

 レイさんの”小手打ち”は見事に命中。奴の腕の力を少し弱めることができた。少しは安全に戦えるだろう。

「小賢しい真似を……」

 ゴリアテは一瞬苛立ちを見せるも落ち着いた様子だ。

「これは避けられないだろ?」

 ハイド伍長が小型バズーカを構え、砲弾を連射。いくつもの砲弾をゴリアテに浴びせた。
 しかし、ゴリアテはあまりダメージを受けていない。

「フン、馬鹿め。貴様の手で仲間が痛い目に合うのを見せてやろう!」

 ゴリアテは右腕に巻き付けられたムチを左手で掴み、ムチごと俺を振り回した! 俺は宙を舞いながらグルグルと振り回されている。
 そしてハイド伍長が放った複数の砲弾が俺に命中。

「痛いんだよおおおお!!!!(マジギレ)」
「タツヤ、大丈夫か!? すまねぇ!」

 ハイド伍長は慌てて砲撃を中断。そしてゴリアテは右腕に巻かれたムチを強引に取り外し、ムチごと俺をハイド伍長目掛けて投げつけた!

「いてぇ!」
「オイ!? いってぇ! オイ! 投げやがったなオイ! もう許せるぞオイ!」

 ハイド伍長と俺はぶつかった衝撃で転がり落ちる。

「俺のせいですまねぇ……。ちょっと待ってな」

 ハイド伍長はすぐに起き上がり、応急処置で俺を回復してくれた。助かったぜ……。
 その時、エーリッヒ大佐が必殺技を放つ体勢を取った。待ってたぜ。

「私の仲間を傷つけた罪を償ってもらおう!」

 エーリッヒ大佐のお供ロボが閃光を発生させると同時に、巨大な稲妻がゴリアテを取り囲む!

「ぐあああああ!!」

 ゴリアテはかなりのダメージを受けたが、立ったまま持ちこたえる。

「俺がこの程度の攻撃で倒れるとでも思ったか!」

 ゴリアテは大剣を振り下ろし、地面に叩きつける!
 ドゴォンッ!!  という音と共に地響きが起き、放たれた斬撃と炎が地面を裂いて俺たちに襲い掛かってきた!

「やべぇ! 避けろ!」
 
 俺たちは必死に飛び退くが、衝撃波と炎は広範囲を巻き込み、避け切れず爆風に巻き込まれた。

「痛いんだよおおおお!!!!(マジギレ)」
「ぐっ……強すぎるぜ……!」
「さすが無法者の親玉。只者じゃないな……」

 俺、レイさん、エーリッヒ大佐は大ダメージを負い、その場に倒れてしまう。
 そんな中、ハイド伍長だけは持ち前の身体能力を活かして高くジャンプし、ゴリアテの攻撃を回避していた。

「俺の必殺技を披露するぜ!」

 ハイド伍長は両手に短剣を構え、まるで分身をしているかのように残像を残しながら素早い動きでゴリアテの身体を斬り続ける。
 短剣には敵の視界を一時的に奪う粉が塗られており、ダメージを与えると同時にゴリアテの視界を奪った。

「小癪な虫けらが……!」

 ゴリアテは力任せに大剣を振り回すが、ハイド伍長はそれを全て避けていた。
 そしてハイド伍長はジャンプしながらゴリアテ目掛けて砲撃し、その砲撃の反動で後退。攻撃しつつ上手くゴリアテから距離を取ったのだ。

「ふんっ!」

 ゴリアテは視界を奪われてもなお、ハイド伍長へ向けて大剣を振り、衝撃波を飛ばしてきた!

「ぐあっ!」

 ハイド伍長は地面に着地と同時に被弾し、大きく吹っ飛んでしまう。

「ハイド伍長! ……早く回復せねば!」

 エーリッヒ大佐がお供ロボへ指示を出し、俺たち全員の体力を回復した。ふぅ、助かったぜ……。

「目潰しとはやってくれるじゃねぇか。だがようやく目が見えるようになったぜ。貴様ら全員皆殺しだ!」

 ゴリアテは力を溜め、その場で回転し、周りに真空波と炎を発生させた!
 炎をまとった全方向真空波を俺たちは避けきることができず、被弾と同時に真空波は爆発。
 その爆発で俺たちは大きく吹っ飛ばされてしまった。痛いんだよおおおお!!!!(マジギレ)
 しかし、レイさんだけは上空に吹っ飛び、その後運良くゴリアテの背後に着地した。これはチャンス!

「じゃあオラオラ来いよオラァ!!」

 レイさんは”おじさんブロー”でゴリアテの兜を殴りまくる。

「うおお……」

 兜越しとはいえ、”おじさんブロー”の威力と衝撃の前には怯ますにいられないゴリアテ。奴が怯んでいる隙に俺もゴリアテに接近する。

「オラァ! 頭をガードしている奴にハゲは効かねーけど、お前にはハゲてもらうぜぇ?」

 俺は”髪なんか必要ねぇんだよ!”でゴリアテの兜を怒りを込めて斬りつける!
 ハゲさせることはできねーけど、こいつの自慢の兜を傷だらけにしてやったぜ。

「これで決める!」

 エーリッヒ大佐がお供ロボに指示を出し、ゴリアテに雷撃を浴びせた。

「ぐっ……この俺の力を持ってしても勝てないとは……」

 ゴリアテは大剣を地面に突き刺し、ぐったりした様子でひざまづく。俺たちはついに無法者の親玉に勝利したぜ。
 弱ったゴリアテの元にエーリッヒ大佐が近づき、真剣な表情でゴリアテに問いかける。

「答えろ。ライナスは今、どこにいる?」
「ライナスは今頃、別の通路を徘徊しているかもしれないな……」
「俺たちとは別ルートにいるってことだな。早いとこ合流しようぜ」

 ということは、ライナスは今頃ハンニバル中将かナイト軍曹の部隊と交戦している可能性が高いということか。
 だが、別ルートへ向かう前にやるべきことが残っているぜ。

「おっと、その前に……そこのデカブツには最後の仕事をしてもらうぜぇ~」
「そうそう、それがいいぜ!」

 俺とレイさんが弱ったゴリアテを取り囲む。

「オラッ! 分かったらとっととお手をしろォ!!」
「おい、何をする!? やめろおおおおおお!!!」

 俺とレイさんは瀕死のゴリアテにひたすら鞭打ち続ける。

「よ~し、無法者のボス調教完了!」
「更生できて何よりじゃねーか」
「ワン……ワン……」

 無法者どもを動かしていた親玉ゴリアテ。奴は四つん這いヨツンヴァインの犬奴隷として更生したのだ。めでたしめでたし。

「無法者の親玉がこんな無様な姿晒してるなんておもしれーな!」
「結局最後は調教して終わりなんだね……」

 ハイド伍長は面白がっているが、エーリッヒ大佐は困惑した様子だ。
 俺たちは引き続き他のルートを探索することになった。