
翌日、俺たちは次の試験を受けるべく軍事基地屋上のヘリポートへ向かった。
前回と同じく屋上にはマティアス司令官、ハイド伍長、ナイト軍曹、エーリッヒ大佐、ライナスが立っている。
今回の試験の相手はエーリッヒ大佐だ。
「こうして君たちと対決するのは初めてだね。今回は私が開発したロボットの性能テストも兼ねて全力でお相手しよう」
エーリッヒ大佐の背後にはいつものお供ロボの他に、銃を装着した人型ロボ2体がいる。
エーリッヒ大佐の他にロボ3体を相手しなければいけないのは厄介だな。
「よーし、そのロボどもをぶっ壊した後はエーリッヒ大佐の綺麗な銀髪をツルッパゲにしてやるぜぇ~」
「後で調教してビデオ撮影してやるから待ってろや」
俺は鞭を構え、レイさんが竹刀を構え、ミカエルは二丁拳銃を手にし、ヨウスケは棒を両手で握り締める。
「みんな頑張れー!」
ヨウスケは活力スプレーで俺たち全員のパワーと身体を強化。
俺たちは電波塔やサイバータワーで機械系の敵を幾度となく倒してきた。ロボとの戦い方は身についているぜ。
「レイさん、いくぞ!」
「よし、いっくどー!」
俺が特製高圧洗浄機による”熱湯シャワー”でロボどもをずぶ濡れにし、レイさんがスタンガンを装着した竹刀でロボどもを攻撃しショートさせる作戦だ。
俺はロボども目掛けて”熱湯シャワー”を発射。しかし――。
「マジックシールド!」
エーリッヒ大佐がお供ロボに指示を出し、お供ロボがホログラムのバリアを展開。”熱湯シャワー”が防がれてしまった!
「ファッ!?」
「タツヤ、エーリッヒ大佐のシールドの前で飛び道具は無意味だ。シールドを打ち消すか、接近して近接攻撃を仕掛けるしかない」
シールドを張っているお供ロボがシールドを解除する瞬間……それは奴が攻撃体勢に入る時だ。
だが、お供ロボに攻撃のチャンスを与えてしまえば、俺たちは確実に奴の電流攻撃を浴びてしまう。
あの広範囲電流攻撃の発動を許してしまった時点で大ダメージは避けられないだろう。ここは……。
「みんな、エーリッヒ大佐に近づいてフルボッコにするぜぇ~!」
「タツヤさんの言う通りだ。誰がシールドの中にこもっていいっつったオイオラァ!」
俺とレイさんはエーリッヒ大佐へ向かって走っていく。
「タツヤ、レイ、危ない!」
ミカエルが注意を引こうとした瞬間、2体の人型ロボが飛行しながら手持ちの銃で銃弾を連射してきた!
銃弾は俺とレイさんに命中。ねーイタいーもう! イッタいよもう!
「ロボのくせにナメた真似しやがって。もう許さねぇからなぁ? 後でまとめてスクラップにしてやるからなぁ!?」
俺とレイさんは2体の人型ロボの銃撃から逃げながらエーリッヒ大佐へ接近。
その時、エーリッヒ大佐が銀色のオートマチック銃を構えた。
「私がロボット無しで戦えないとでも思ったのかい? 甘い!」
エーリッヒ大佐は俺とレイさんへ向けて発砲。奴が放った銃弾は着弾と同時に電流が走る。
「アツゥイ! このままじゃ一方的にやられっぱなしだぞオイ!」
「回復するよ!」
ヨウスケが回復スプレーで俺とレイさんの体力を回復。
しかし、俺とレイさんは人型ロボとエーリッヒ大佐から集中砲火を浴びている。
「痛いんだよおおおお!!!!(マジギレ)」
この時、ロボどもは完全に俺とレイさんをロックオンしていた。
「……タツヤ、レイ、よく耐えたな」
ミカエルが人型ロボ1体へ向けて高くジャンプし、ロボの背中に飛び乗る。
ロボはミカエルを振り払うべく空中で暴れるが、ミカエルは必死にしがみつきながらロボの背中をナイフで切り続ける。
そしてロボの動力源となるコアを見つけ出したミカエルは、コア目掛けて本気でナイフを突き刺した。
ロボは機能停止と同時に落下。死んだのだ。
ミカエルは軽やかにジャンプし着地する。
「よし、1体片付けたぞ」
「ミカエル、よくやったぜ!」
「残り1体、オレたちもやってやろうぜ!」
「おれも頑張ってロボ倒すぞー!」
俺たち全員で残りの人型ロボを追い、それぞれの武器で飛びかかる。
しかし、ロボの動きは素早く、なかなか攻撃を当てることができない。
ロボは空中で俺たち全員の攻撃を避けつつ、手持ちの銃で俺たちを銃撃。ねーイタいーもう! イッタいよもう!
そんな中、俺は銃撃の痛みに耐えつつロボの動きを観察。
奴がみんなの攻撃を回避し続け、わずかな隙ができた瞬間を俺は見逃さなかった。
俺は鞭をロボの足を巻きつけ、そのまま地面へ強く叩きつけた!
「やっと捕まえたぜオラァ〜」
「タツヤさんナイス! 本気で怒らしちゃったねぇ! オレのことねぇ! おじさんのこと本気で怒らせちゃったねぇ!」
レイさんがスタンガンを装着した竹刀でロボを殴りまくる。
「YO! YO! YO~!」
ロボはレイさんの電流でショートを起こし、もはや飛ぶことができなくなっていた。
「とどめはおれがやるよー!」
そしてヨウスケが倒れているロボ目掛けて棒を突き刺す。2体目の人型ロボも機能停止。死んだのだ。
残るはエーリッヒ大佐とお供ロボだけだ。
だが、エーリッヒ大佐は2体の人型ロボを破壊されてもなお、余裕の表情を見せていた。
「試作品とはいえ、まさかあの2体のロボットがやられるとはね。君たちの成長には驚かされたよ。……だが、この勝負は私の勝ちだ」
エーリッヒ大佐のお供ロボから凄まじいエネルギーを感じる。おい、これってまさか……?
「なるほど。私たちがあの2体のロボと戦っている間、エーリッヒ大佐が手出しをしてこなかったのはそういうことだったのか」
「どういうことだよ?」
「エーリッヒ大佐にエネルギーチャージのチャンスを与えてしまったんだよ」
「ファッ!?」
エーリッヒ大佐はお供ロボを経由して広範囲に電流を発射する攻撃を持つ。
その攻撃は発動までに時間を要するが、今回は俺たちが2体のロボに気を取られている間、奴にぱチャージの時間を与えてしまったということだ。
エーリッヒ大佐はこれから必殺技を放ってくるに違いない……!
俺たちは2体のロボとの戦いで消耗している。今、奴の必殺技をまともに受けたら全滅してしまう!
「やべー攻撃が来るぞ! ヨウスケ、回復の準備をしろ! 他のみんなはとにかく耐えろ!」
「わかった! スプレー出し続けるよ!」
「ここまで来たからにはやられてたまるかよ!」
「ここは私もできる限り回復弾を使おう」
俺たち全員、回復と防御態勢に入る。
「これは私が君たちに与える最大の試練となるだろう。この先へ進みたければ私の必殺技を耐えてみせよ!」
エーリッヒ大佐のお供ロボが閃光を発生させると同時に、巨大な稲妻が俺たちを取り囲む!
「「「「アッー!」」」」
痛いんだよおおおお!!!!(マジギレ)
それでも俺たちは防御と回復スプレーで必死に耐え続ける。
エーリッヒ大佐の必殺技発動中、ヨウスケが”超回復術”を使ってくれたおかげでなんとか持ちこたえることができた。
「もうスプレー切れちゃったよ~」
「よくやったな、ヨウスケ。エーリッヒ大佐は大技を使い果たしたぞ。攻めるなら今だぜぇ~」
「心得たあぁぁぁぁ!!」
俺はエーリッヒ大佐のお供目掛けて”熱湯シャワー”を発射。
「マジックシールド!」
エーリッヒ大佐がお供ロボに指示を出し、お供ロボがホログラムのバリアを展開。
”熱湯シャワー”が防がれてしまった。だが、これも計画通りだぜ。
その隙にレイさんがエーリッヒ大佐に接近。
「じゃあオラオラ来いよオラァ!!」
レイさんの必殺技”おじさんブロー”がエーリッヒ大佐に叩き込まれる。
「くっ……!」
”おじさんブロー”を受けたエーリッヒ大佐はめまいを起こし怯む。
そして俺はエーリッヒ大佐の目の前に立ち、片手に散髪刀を握り締める。
「よぉ~し。これから一番のお楽しみタイム始めるぜぇ~。髪なんか必要ねぇんだよ!」
俺は”髪なんか必要ねぇんだよ”でエーリッヒ大佐の髪を剃っていく。
長く美しい銀髪のエーリッヒ大佐はあっという間にハゲてしまった。イケメンを台無しにしてやったぜ。
「うぅ……なんてことだ!」
ハゲさせられてしまったエーリッヒ大佐は怒りと同時に深い悲しみに包まれる。
その様子を離れた場所から見守っていた軍人たちは唖然としていた。
ただ一人、ライナスだけはハゲたエーリッヒ大佐を見て「ハハハ! 似合ってるじゃねーか」と笑っていたが。
「は、早くこの頭を元に戻さねば……」
エーリッヒ大佐は急いでお供ロボに回復の指示を出すが……。
「させるか!」
ミカエルが二丁拳銃で必殺技”ラピッドファイア”を放った。毒を含んだ弾丸が雨のようにエーリッヒ大佐を襲う。
ミカエルの攻撃は状態異常の相手に対して威力が大幅に増加する。ハゲた状態のエーリッヒ大佐はかなりのダメージを受けていた。
「エーリッヒ大佐、これで最後だ!」
ヨウスケが棒でエーリッヒ大佐を殴りまくる!
そしてついにエーリッヒ大佐は地面に倒れ込んだ。
「参ったよ。私の負けだ。君たちの連携プレーは素晴らしかったよ」
エーリッヒ大佐は俺たちの成長を見て喜びつつも、丸坊主にされた恥ずかしさのあまり落ち込んでいた。
「よっしゃー! オレたちの勝ちだー!」
「おれ、めっちゃ頑張ったよね!?」
「あぁ、みんなよくやった」
「イケメンの丸刈りショー、最高に楽しかったぜぇ~。エーリッヒ大佐、今ここでビデオ撮影していいか?」
「駄目に決まってるだろう!」
普段は優しい紳士なエーリッヒ大佐も、さすがにハゲさせられてお怒りのようだ。
俺たちは互いに拳を突き合わせ、勝利を分かち合う。
その時、後ろで見ていたマティアス司令官、ハイド伍長、ナイト軍曹が拍手を送った。
「今回も見事な戦いだった。次の戦いも期待しているぞ」
「エーリッヒ大佐のロボも倒しちゃうなんて凄いぜ!」
「よし、次は俺の番だな。フルアーマーの俺にハゲは効かないぜ。覚悟しておくんだな」
これで第2の試験はクリア。次の試験の相手はナイト軍曹だ。
ナイト軍曹の頑丈なフルアーマーの前ではハゲどころか、そもそも俺たちの攻撃がまともに通るのか、これもうわかんねぇな。
これにて今日の仕事は終了だ。俺たちは明日の戦いに備えてゆっくり休むことにした。