第46話 無法地帯の脅威!

 俺たちは極力敵に見つからないように少しずつ先へ進む。
 しかし、障害物の少ない広々とした荒野では隠密行動が上手くいくはずもなく……。

「ヒャッハー! 獲物を見つけたぜー!」
「軍人もいるぞ! さっさとぶっ殺しちまおうぜ!」

 ヤバい、無法者4人が襲い掛かってきた!

「まずいな。だが俺のスピードについてこれる奴はいないぜ!」

 ハイド伍長は敵よりも先に二刀の短剣を手に持ち、素早く斬り込んだ。威力はさほど高くないが、敵の視界を一時的に奪う粉が塗られている。
 無法者どもはダメージと共に視界を奪われて怯む。しかし、すぐさま体勢を立て直す奴もいた。二刀の剣を持つ、フードを被った暗殺者アサシン風の男だ。

「素早い奴がお前だけじゃないってことを思い知らせてやる!」

 フードの男は手持ちの武器を即座に手投げナイフへ切り替え、ナイフを俺たち全員へ向けて素早く投げつけた。
 ねーイタいーもう! イッタいよもう! こいつ、ミカエルと似た技を使ってくるんだけど何なんだよ!
 その上、ナイフを食らった瞬間に俺たち全員は苦しみを覚える。

「奴め、ナイフに毒を塗っている……」
「ファッ!? そんなとこまでミカエルに似なくていいから!」
「とにかく早いとこ始末してから毒を治療するぞー」
「おじさんのこと本気で怒らせちゃったねぇ!」

 しかし、俺たちが攻撃するよりも先に別の無法者が襲い掛かる! フードの男と同じく二刀の剣を持つマスク男だ。

「Fooooo! 遅い遅い! あくびが出るぜ~」

 マスク男の二刀の剣による連撃で俺たちは大ダメージを受けた! 痛いんだよおおおお!!!!(マジギレ)

「みんな、フードの男だけじゃなく、あのマスク男も暗殺術の使い手のようだぜ。あいつらの攻撃は状態異常食らっている相手へのダメージがかなり上がるんだ!」
「ファッ!?」

 まるで性格がヒャッハーになったミカエル2人を相手しているみたいで厄介だぜ!
 幸いなことに、この2人を除く残りの無法者どもは先ほどのハイド伍長の攻撃で視界を奪われている。こいつらが動きだす前に反撃するぜ。

「もう許さねぇからなぁ~?」
「ハリケーン!」

 俺は”炎の鞭”、レイさんは”ハリケーン”で無法者どもを攻撃。しかし、無法者どもはまだ倒れていない。しぶとい奴らだ。
 すると、今まで視界を奪われていたモヒカン男と海賊のコスプレした男が襲い掛かってきた!

「汚物は消毒だ~!」
「オラァ! さっさと死にやがれ!」

 モヒカン男は火炎放射器による炎で、海賊男は爆弾を投げて俺たちを攻撃。アツゥイ!!
 まだ戦いは始まったばかりなのに、俺たちは雑魚戦でいきなり瀕死状態になってしまった。

「待たせたね。これで仕留める!」

 エーリッヒ大佐の広範囲電流攻撃が無法者どもを襲った。エーリッヒ大佐の攻撃は発動に時間が掛かるんだったな。

「「「「ぎゃあああああああ!!」」」」

 無法者どもはその場に倒れ、撃沈……?

「危なかったね。今、回復するから待ってね」

 エーリッヒ大佐のお供ロボが俺たち全員の体力と状態異常を回復。エーリッヒ大佐が回復スキルを持っていたなんて知らなかったぜ。

「さーて、調教タイムいくぜ~」
「オラァ! 大人しくお手をしろぉ!」

 俺とレイさんは倒れた無法者どもを調教しようとするが……。

「ケツがお留守だぜ」

 瀕死のモヒカン男がいつのまにか俺の背後に立ち、手持ちの釘バットで力いっぱい俺のケツをケツバットした!

「オイ!? いってぇ! オイ! 叩きやがったなオイ! もう許せるぞオイ!」

 悪あがきとはやってくれるじゃねぇかオイ。俺とレイさんはこのモヒカン男を真っ先にボコボコにして調教してやったぜ。

 「「「ワン……ワン……反省してまーす……」」」

 俺たちは無法者どもを調教完了……と思ったのだが、フード男の姿が見当たらないことに気づく。
 俺たちがモヒカン男に気を取られている間に逃げやがったな、オイ!

「……いや、奴はこの近くにいるぜ」
「ファッ!?」

 ハイド伍長は警戒しながら短剣を構える。その直後、エーリッヒ大佐の背中が何者かによって斬りつけられた! その場から血しぶきが激しく飛び散る。

「ぐあっ!」
「エーリッヒ大佐!」
「おい、何が起きたんだよ!?」

 背中を斬りつけられたエーリッヒ大佐はうつ伏せに倒れ、一撃で戦闘不能になってしまった。ウッソだろお前……?

「あばよ、軍人さん」

 エーリッヒ大佐の背後で二刀の剣を逆手に構えながら姿を現すフード男。こいつ、カモフラージュ能力まで持ってやがるのか……。そしてフード男は瀕死の状態のまま逃走した!

「よくもエーリッヒ大佐を! 許さねぇ!」

 ハイド伍長はすぐに小型バズーカを構え、逃げるフード男を狙撃。弾の速度は非常に早く、フード男を転倒させることに成功した。

「今度こそ調教してやるからなぁ~?」

 俺たちはフード男を死ぬ寸前まで痛めつけ、全身の毛をライターであぶり、調教して犬奴隷にしてやったぜ。

「ワン……ワン……」
「なんとか勝てたな……」
「早くエーリッヒ大佐を治療しないと!」

 ハイド伍長は急いでエーリッヒ大佐の元へ駆け寄り、傷口を治療する。

「助かったよ。ありがとう、ハイド伍長」

 エーリッヒ大佐はなんとか一命を取り留めた。さすが荒野の無法地帯、恐ろしい場所だぜ……。

「ここは少しでも戦闘を避けて進まないと体が持たないな」
「戦闘終わったらすぐに回復しないと死ねるぜ……」

 幸い、エーリッヒ大佐とハイド伍長が回復スキルを持っている。その後は戦闘と回復を繰り返しながら先へ進んでいった。
 そして無法者どもとの長い戦いの末、一際目立つ男に遭遇した。
 顔半分を覆う兜、頑丈そうな戦士風の装備、巨大な大剣、そして偉そうにマントをつけた大柄な戦士だ。

「うわっ、何だこのデカいオッサン!?」
「勇者のコスプレかよォ!?」
「……お前、無法者の親玉だな?」

 俺とレイさんが男の姿を見て驚く中、ハイド伍長は冷静な様子で男の正体を無法者の親玉と見抜いた。

「軍の奴らか。何しにここへ来た?」
「ここの無法者たちが軍事基地の襲撃を目論んでいるとの情報があった。軍と市民たちを守る為、この無法地帯を一掃する!」

 親玉が問いかけると、エーリッヒ大佐は親玉に対して宣戦布告をした。

「うるせぇ! 貴様ら軍人どもこそ、自由に生きる我々無法者を攻撃してるじゃねーか! 俺はライナスって男から聞いたんだ! 貴様ら軍人どもが何の罪の無い俺たちを、無法者というだけで排除しようとしているとな!」
「……やはりライナスが絡んでいたか」

 どうやらライナスは親玉に嘘を吹き込んで無法者どもを動かしていたようだ。
 ライナス1人では無法者どもを動かす力を持たない。だが無法者どもを指揮する親玉を手玉に取っていたなら納得だ。

「いやいや、無法者の時点でお前らは立派な犯罪者だろ」
「そうだぜ~。お前がライナスに騙されていたとしても罪を償ってもらうぜぇ~?」
「無法者は無法者というだけで犯罪者ってはっきりわかんだね!」

 ハイド伍長、俺、レイさんは無慈悲な言葉を親玉へぶつけた。

「なんだと!? 貴様ら、今、俺たち無法者をしやがったなあああ!!」
「何が差別だよ! 犯罪者は取り締まるのが当たり前ダルルオ!?」
「俺はこの荒野の無法地帯を支配する男、ゴリアテだ! 貴様ら差別主義者なぞ返り討ちにしてくれるわ!」

 ゴリアテと名乗る親玉は大剣を構え、俺たちの前に立ちふさがる!
 なんだかめちゃくちゃ強そうな奴でやべぇよ……やべぇよ……。エーリッヒ大佐とハイド伍長がいれば大丈夫……だよな?