第44話 スラム制圧作戦!

 軍事基地脱走を試みる俺たち。ところがハンニバル中将に見つかってしまった。
 ハンニバル中将は今すぐ引き返せば俺たちを許してやるとのことだ。
 ここは素直に引き返すべきか? だが、このチャンスを逃したらもう脱出はできない。
 ここで俺が下した決断は――。

「ごめんなさい! 部屋に戻ります! 許して下さい! なんでもしますから!」
「えぇ!?」

 ハンニバル中将はマティアス司令官と並ぶ化け物だ。俺たちが束になっても勝てるわけが無い。俺は素直に引き返す選択を選んだ。

「よーし、素直でいい子だ! 明日から長い戦いになるからな。部屋に戻ってゆっくり休めよ」
「は、はい……。ありがとうございます」
「そうだよな、戦いの前日に夜更かしなんて良くないよな」
「結局こうなるのか……」

 ハンニバル中将は笑顔で許してくれた。こいつが心の広い奴で助かったぜ。基地脱出は失敗に終わり、俺たちは自室へ戻ることにした。
 そして翌朝――。

「もう1日くらい休みが欲しかったー」
「ついに戦う時が来てしまったぜ」
「大丈夫だろ。強い軍人さんが4人もついているし、何よりハンニバル中将がいるからな!」
「準備できたら私たちも向かうぞ」

 俺たちは朝の支度を済ませた後、軍事基地の外に出た。

「みんな、来てくれたんだね」
「俺の個別任務無くなっちゃったけど、お前たちと一緒に同行できて嬉しいぜ」
「ハンニバル中将は先にスラム街へ向かっていったぜ。君たちも一緒に行くぞ」

 外にはエーリッヒ大佐、ナイト軍曹、ハイド伍長が待機していた。俺たちのことを待っていてくれたなんて優しいぜ。
 やっぱり脱走なんてするもんじゃねーな。あんなことを提案した俺はバカだったぜ。
 軍人さんたちと合流した俺たちは一緒にスラム街へ向かう。軍事基地から遠く離れた場所にあるから行きも大変だ。
 しばらく移動し続け、ついにスラム街へ到着。スラム街に相応しく、道や建物がろくに整備されていない薄気味悪い街だ。
 そしてそこは阿鼻叫喚の地獄絵図だった。辺りは血の海と化し、頭部を粉砕された死体、身体を引き裂かれて内臓が飛び出した死体があちこちに転がっていたのだ!
 あのさぁ……こんなギャグ作品でスプラッターなグロシーンを披露しなくていいから……。

「うわっ! チンピラたちが倒されてるよ!」
「ハンニバル中将は仕事が早いな。既にスラム街の一掃は完了しているかもしれない」
「ここにいるチンピラどもをまとめて調教したかったんだけどなぁ~。もったいないことしてくれたぜ」
「チンピラなんて外にまだいっぱいいるだろ。そいつらを調教していくどー!」
「と、とにかく先へ進もう……」

 エーリッヒ大佐、ナイト軍曹、ハイド伍長はその光景にドン引きした様子を見せるも、先へ進むように俺たちへ促す。
 俺たちが入ってきた出入り口から逆方向を進んでいくと、ハンニバル中将の姿があった。
 ハンニバル中将は返り血を浴びていて、まだ殺り足りないと言わんばかりの表情をしている。
 これ、ハンニバル中将が1人でやったんだよな? 奴が敵じゃなくて助かったぜ……。

「待っていたぞ。お前らが来る前にここの雑魚どもは俺が一掃しておいたぜ」
「ハンニバル中将は仕事早いな!」
「これ、俺たちの出番いらなくね……?」
「そうとは言えないよ、ナイト軍曹。スラム街はともかく、広大な荒野を制圧するには私たちやタツヤ君たちの力も必要だ」

 いや、どう考えてもこの任務はハンニバル中将1人で十分だろ。でもせっかくスラムに来たからには無法者どもを少しでも多く調教してやるぜ。
 俺たちがスラム街を出ると、すぐそこは荒野への道となっていた。ここから先は道が3方向に分かれている。3パーティに分かれて行動した方がよさそうだ。
 そこでハンニバル中将がパーティの人員配置の提案をする。

「ここからは3部隊に分かれて行動するぞ。第1部隊は俺。第2部隊はナイト、新入り2人。第3部隊はエーリッヒ、ハイド、新入り2人。こんな感じでどうだ?」
「はい、問題ありません」
「エーリッヒ大佐と一緒なら心強いな!」

 なるほど、ナイト軍曹は単独でライナスとやり合える強さを持つから3人パーティ。エーリッヒ大佐とハイド伍長は単独ではライナスに勝てないから4人パーティってことか?
 でも人数多い方が楽そうだし、俺は……。

「俺はエーリッヒ大佐とハイド伍長のパーティに入りたいぜ!」
「じゃあオレもタツヤさんと同行するぞ!」
「おい、勝手に決めるな!」
「早いもの勝ちだぜぇ~! ハンニバル中将、問題無いよな?」
「あぁ、お前らの好きにしろ」

 これで俺とレイさんはエーリッヒ大佐とハイド伍長のパーティで決まりだ。
 残されたミカエルとヨウスケの元へナイト軍曹が近づく。

「安心しろ。お前ら2人とも俺が守ってやるからよ!」
「確かにナイト軍曹は強いもんな。頼りにしてるよ」
「おれはナイト軍曹のパーティでサポート頑張るよ」
「それは助かるぜ!」

 ミカエルとヨウスケはナイト軍曹の部隊で決まった。

「俺は中央の道を進む。エーリッヒ・ハイドの部隊は左の道、ナイトの部隊は右の道を頼むぞ」
「了解です、ハンニバル中将」
「了解です! 新入りたちの命を預かっている以上、精一杯戦うぜ!」
「無法者なんかサクっと倒してやるぜー!」

 軍人さんたちは自信満々だ。この荒野にとんでもなく強ぇ敵がいなければ良いのだが……。

「無法者なんか片っ端から調教してやろうぜ!」
「よーし、ライナスを見つけたら調教してその様子をネットに配信してやろうじゃないか!」
「奴はそれだけの罪を犯したのだから、それくらいやってもいいよな」
「無法者がいっぱいいるのは怖いけど、ナイト軍曹がいるから頼りにしてるよ」

 俺たちは3パーティに分かれ、荒野を制圧していくことになった。


 ――その頃、マティアス司令官は……。

「ここでじっとしているのもつまらんな。久々にを使ってみるとするか」

 マティアス司令官が取り出したのは、生身の人間では扱うことすらできない、特注の大型スナイパーライフルだ。
 このスナイパーライフルは最大で5キロメートル先まで狙撃することができるのだ。
 高い威力と射程の長さ故に反動が非常に強い銃だが、マティアス司令官が使えば無反動で狙撃が可能だ。
 マティアス司令官は司令室から軍事基地の屋上へ移動し、そこで警備をしているスナイパーたちと共に大型スナイパーライフルを構える。

「マティアス司令官、ここは私たちが……」
「諸君は基地周辺に紛れ込んだ敵を撃て。私はもっと遠くの敵を狙撃する」
「か、かしこまりました!」

 マティアス司令官は大型スナイパーライフルで遠く離れた場所を監視する。
 そして、かつて俺たちが攻略した生物兵器研究所跡地の入り口周辺で群れる無法者どもを発見。
 マティアス司令官はすぐさま大型スナイパーライフルで無法者どもを次々と狙撃。無法者どもは木っ端微塵に爆散していった。

「あんなに遠くの敵をたった数発で……!?」
「お見事です! マティアス司令官!」

 スナイパーたちは思わず拍手をし、屋上では歓喜の声が上がっていた。