ダイナミックポリスメン ~足立機動特捜班~

作品概要

GTA風ポリスアクション。
足立署に配属された選ばれし4人の屈強な警察官たちが、暴走窃盗の常習犯を派手に捕まえます。
約2500文字で完結済みの短編作品。
この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係 ありません。

あらすじ

舞台は東京都足立区。東京でもっとも危険な街──警察内部では密かに「東京のデトロイト」と揶揄されている。
車上荒らし、強盗、麻薬取引、暴走族──法の枠をはみ出した連中が、まるでゲームの世界のように暴れまわっていた。
治安の悪い街だからこそ、街の治安を守る存在が求められた。
それは足立署に配属された、選ばれし4人の屈強な警察官たちである。

外部投稿サイトで読む方はこちら


本編

ここは東京都足立区。この街は都内でありながらも数多の犯罪が跋扈する“無法の巣窟”として、警察内部では密かに「東京のデトロイト」と揶揄されている。
 車上荒らし、強盗、麻薬取引、暴走族――法の枠をはみ出した連中が、まるでゲームの世界のように好き勝手暴れまわっていた。
 そんな足立区で警察官を名乗るなら、それなりの“覚悟”と“武闘力”が必要だった。
 並の警察官ではすぐさま巻き込まれ、パトカーごと焼かれ、新聞の一面を飾るのがオチである。だからこそ、この街には治安を守るべき存在が求められた。

 ――アダチ・デルタフォース。

 それが足立署に配属された、選ばれし4人の屈強な警察官たちの通称だ。

「窃盗犯が環七南通りを北へ逃走中! ナンバーは足立530・の・1031、黒のクラウン! ただいま加速中!」

 無線の緊急通信が鳴り響く。足立署の駐車場にエンジン音が激しく鳴り響いた。

「よし、行くぞ。田所班、出動だ!」

 声を張り上げたのは、班長の田所礼二。巨体に黒の皮ジャン、顔には古傷がいくつも走っている。部下いわく、「パトカーよりタフ」と言われる生きる伝説だ。
 彼の隣には沈着冷静な副長、遠野聡。鋭い目つきで状況を即座に把握し、狙い撃つような戦術を展開する切れ者だ。
 3人目は豪腕ハンドル捌きで名を馳せる三浦直樹。
 そして最後尾には、喧嘩百戦錬磨の突撃番長・谷岡雄介。喧嘩も運転も力任せ、だが最後には必ず結果を出す生粋の足立育ちの男だ。

「全車、追跡開始。目標は窃盗犯一名。車輌接触も許可する。止めるぞ、全力でな!」

 4台のパトカーが、一斉に環七へと飛び出していく。
 逃走中の犯人──40代前半の男、暴走窃盗の常習犯・片桐修二。
 裏では“爆走カタギリ”の異名を取り、警察とのチェイスゲームを繰り返す逃走劇のプロだ。
 彼の愛車は、改造されたクラウンRSターボ。ノーマルの2倍以上の馬力を誇り、区内ではどの車よりも速い。

「足立の警察どもか。俺は幾度となく警察どもから逃げ切ったんだ。ここで捕まってたまるかよ」

 ルームミラー越しに、4台の白黒パトカーが全力で迫ってくるのが見えた。背筋が凍る感覚が片桐を貫く。
 だが片桐には逃げ切る自信があった。自らチューンした車の性能と、熟練のハンドルテク。
 何より自分が“プロ”であるというプライドが、片桐を走らせていた。

「こっちは環七南、首都高下の直線コースだ。加速で押し切るつもりだな」

 三浦が冷静にハンドルを握りつつ、距離を計る。

「直線勝負じゃ逃げられる。だが足立の道は一本道じゃねぇ」

 遠野がタブレットを操作し、周辺の信号サイクルと交通量をリアルタイムで把握する。

「右に回り込めるのは……谷岡、左車線から回り込め!」
「よっしゃ、まかせろ!」

 谷岡のパトカーが信号無視し交差点を突っ切り、猛然とドリフト走行しながら左へカーブを切る。

「このまま先回りして荒川河川敷方面に誘導しろ。田所、俺たちは真後ろにつく!」
「かしこまり!」

 4人は絶妙な連携で、逃げるクラウンを段階的に囲い込んでいった。
 片桐は次の交差点で左折しようとしたが、タイミング悪く大型トラックが交差点をふさいでいた。
 片桐は瞬間的に舵を切り直し、歩道ギリギリを走り抜ける。

「危ねぇな!」
「なんだあの車は!?」

 歩行者たちの悲鳴があがるが、止まるわけにはいかない。そして──。

「はさめ!!」

 交差点を出たところで、右から谷岡の車が猛スピードで合流。左からは三浦、後方には田所と遠野の車が一直線で迫っていた。
 片桐は一瞬、冷や汗を流したが、まだ突破口はあった。

「この俺が逃げられねぇわけねぇだろぉッ!!」

 エンジンを唸らせて、片桐は中央分離帯をまたぐ形で強引にUターンを試みる。
 その瞬間──。

「足立警察をなめんなよ!」

 田所のパトカーが側面から激突。

「うぉおおおらあああああ!! あくしろよオラァ!!」

 続いて谷岡の車が、真正面から追突。

「動きを止めろ、三浦ァ!」

 三浦の車が左後方から突っ込んでボディをえぐりこみ、最後に遠野が右前方をブロックして、完全に囲い込んだ。
 ──片桐が運転するクラウンは完全に身動きを封じられた。

「終わったな」

 田所が車を降りる。190センチ近い巨躯に、黒の防弾チョッキが映える。

「片桐修二。公務執行妨害、車両窃盗、信号無視その他もろもろ。足立警察、地獄の追跡劇はここまでだ」
「く……くそっ! こんなの日本の警察がやることじゃねーだろ!」

 車内で片桐がシフトを無理やり入れ直すが、四方を塞がれ、どうにもならない。
 そのとき、田所が一歩前に出ると、助走をつけてダッシュし、フロントガラスに向かって勢いよくジャンプした。

「これが足立流ドロップキックだ!!」

 その巨体が宙を舞い、見事なドロップキックがクラウンのフロントガラスを突き破った。

 「ガシャアアアアアアアアアアン!!」

 砕けたガラスの破片が飛び散る中、田所は体勢を崩さず着地し、無理やり運転席から片桐を引きずり出す。

「ぐっ……離せぇ!」
「暴れんなよ」

 片桐を地面に叩きつけ、手錠をパチンと掛けた。これにて事件は幕を閉じた。
 辺りには、4台の無残なパトカーと、ボコボコになったクラウン、そして取り押さえられた片桐が横たわっていた。
 遠野が溜息をつきながら、パトカーの破損を見てつぶやく。

「……またパトカー壊れちゃったねー」

 すると田所が血のついた手を拭いながら笑った。

「これくらい派手にやらなきゃ足立警察はやってられねーよ」
「そうだよ (便乗)」
クルルアなんて何度でも修理すりゃ良いんだよ」

 三浦と谷岡も便乗して笑っていた。
 この街には平穏は似合わない。正義も悪も、全てが混じり合って、爆音とともに過ぎ去っていく。
 それでも、今日も正義の鉄槌は確かに振り下ろされた。
 ここは足立区。東京でもっとも危険な街──そして最強の警察官たちが守る街だ。