第34話 電波塔の支配者を調教する!

 電波塔の頂上にある部屋へ入った俺たち。その部屋は多くの機械が設置されている、古びたコンピュータールームだ。
 その機械を操作しているのは、高さ2~3メートルほどあるゴツい見た目の人型ロボットだ。人間じゃないのかよォ?

「こいつだな。塔の頂上から電波を流し続けている奴は」
「ロボットは調教できないから苦手だぜ」
「調教できないなら叩き壊すのみだ!」
「君たちは本当に調教のことしか考えてないんだなぁ……」

 俺たちを見て困惑するハイド伍長。その時、背を向けていた黒幕のロボが俺たちの方へ振り向いた。

「侵入者発見。コレヨリ排除モードニ入ル」
「うわっ! しゃべった!?」

 俺たちを見ると喋り出したロボ。……ん? ということは……?

「喋れるロボってことは、こいつ調教できんじゃね?」
「ロボでも意思を持ったロボは調教できるってはっきりわかんだね!」
「え? そうなの!?」

 人間同様の意思を持った奴なら調教できる気がしてワクワクすっぞ。

「我ガ名は”ジャガーノート”。人間ドモヨ、棄テラレタロボットたちノ恨ミヲ思イ知レ!」

 ジャガーノートと名乗るロボは片手に持ったハンマーで俺たちを叩き潰そうと襲い掛かる。

「危ねぇ!」

 俺たち全員は奴のハンマー攻撃を避けたが、ハンマーを地面に叩きつけられた衝撃で地面は大きく揺れる。
 ハイド伍長以外のメンバー全員がバランスを崩して転倒してしまった。
 その一方、ハイド伍長は地面の揺れに耐えつつバズーカを構え、ジャガーノートへ狙いを定めていた。

「ターゲット ロックオン!」

 ハイド伍長はジャガーノートの両手目掛けて2回砲撃。砲弾は着弾と同時に軽く爆発を起こした。

「よし、これで奴の力を少し弱めることができたぜ」
「グヌヌ……小賢シイ人間メ!」

 ジャガーノートの両手に大きな傷がついた。さすがハイド伍長だぜ。

「みんな、頑張れー!」

 ヨウスケは活力スプレーで俺たち全員のパワーを強化。

「よぉ~し、俺もいっちょやるか! レイさん、”ハリケーン”お願いしナス!」
「おう、いっくよ~!」

 レイさんが竹刀を大きく振るい、ハリケーンを放つ。そして俺がその竜巻に乗り、勢いよくジャンプした。
 俺はジャガーノートの頭上に着地し、散髪刀を構える。

「髪なんか必要ねぇんだよ!」

 俺はジャガーノートの頭を丸刈りにするべく、散髪刀で奴の頭を斬りつける。
 しかし、それには致命的な問題があった。ジャガーノートはロボットだ。当然、頭に毛は生えていない。
 最初からハゲている敵をハゲさせても意味が無いのだ!

「こいつ、元々ハゲてるからハゲさせても意味ねーじゃん!」
「タツヤさん、それジャンプする前に気づこうよ!」

 ちくしょう、俺の必殺技が失敗に終わっちまったぜ……。
 すると、ジャガーノートは自分の頭上にいる俺を片手で掴み、地面へ強く叩きつけた。

「オイ!? いってぇ! オイ! 投げやがったなオイ! もう許せるぞオイ!」

 ハゲが効かない上に舐めた真似しやがるとは、もう許さねぇからなぁ?

「ハゲが効かないならこいつはどうだ?」

 ミカエルが必殺技”ラピッドファイア”でジャガーノートに無数の弾丸を浴びせる。

「フン、コノ程度カ……」

 ダメージはそこそこ通っているが、”ラピッドファイア”の持ち味である状態異常が全く効いていない!

「残念ながらロボットに状態異常は効かないよ。俺もミカエルと同じように状態異常で敵を弱らせて仕留めるタイプだからさぁ、状態異常が効かない機械系の敵は苦手なんだよね……」

 ハイド伍長、どうりで砲撃を多用してたのか。……って、そんな大事なことは先に言えよなぁ!?

「死ネエエエエイ!」

 ジャガーノートは全身から電流を放電し、俺たち全員に電撃を浴びせた!

「「「「「アッー!」」」」」

 痛いんだよおおおお!!!!(マジギレ)
 俺たちは大ダメージ負った上に体が麻痺してしまった。
 俺たちが麻痺している隙に、ジャガーノートが連続パンチで追撃を仕掛けてくる!

「うわー!」
「オイ!? いってぇ! オイ!」
「痛ぇっつってんだろ!」

 奴のパンチを食らった俺たちは次々と吹っ飛ばされていく。やべぇよ……やべぇよ……。

「俺は麻痺が解けたぜ。ここから体勢を立て直すぞ」

 ハイド伍長の体の麻痺が解けたようだ。さすが軍人さんは回復が早いな。
 ハイド伍長は真っ先にヨウスケの元へ駆け寄り、ヨウスケの体力と麻痺を治療する。

「ヨウスケ、立てるか?」
「うん、ありがとう」

 よし、サポート役のヨウスケさえ立ち直ればこっちのもんだぜ。

「みんな、反撃いくよ!」

 ヨウスケの必殺技”超回復術”によって俺たち全員が体力と状態異常を回復して体勢を立て直した。
 俺は特製高圧洗浄機で熱湯シャワーをジャガーノートに浴びせる。

「洗い流してやるぜ~」

 ジェット噴射された熱湯シャワーはジャガーノートをずぶ濡れにする。
 ダメージはあまり与えられなかったが、これはレイさんとの連携の準備だ。
 そこでレイさんが手持ちの竹刀にスタンガンを装着し、電流を帯びた竹刀でジャガーノートを斬りつける!

「オーイオラァ!」

 レイさんの攻撃が命中すると、ジャガーノートは全身に電流が流れ、ショートし始めた!

「ギャアアアアア!」

 おー良いカッコだぜぇ? 最初からこの方法を思いついておけば良かったぜ。

「なるほど、水と電気の連携で威力を強化したのか」
「君たち、あれから凄い成長を遂げたみたいだね」

 ミカエルとハイド伍長も感心してくれたようだな。

「グヌヌ……人間ゴトキニ負ケルモノカ……」

 ジャガーノートは再び俺たちに連続パンチを放ってきた。だが、さっきよりも動きが遅くなっている。
 ハイド伍長はジャガーノートのパンチを軽々と避け、奴の拳を足場にしてジャガーノートの頭部へ跳び乗った。

「よし、俺の必殺技を披露するぜ!」

 ハイド伍長はまるで分身をしているかのように、残像を残しながら素早い動きでジャガーノートの頭部を斬り続けた。ジャガーノートの頭部は徐々に基盤が剥き出しになっていく。

「ロボットと言えどもこいつは頭部が弱点っぽいな。ならここで決める!」

 ミカエルは二丁拳銃でジャガーノートの頭部へ向けて連続で発砲。
 原型を留めないほど頭部を破壊されたジャガーノートは、ついにうつ伏せになって倒れた。
 これでメインターゲットは倒したが、俺たちにはまだやることが残っているぜ。

「ロボットでも人間の意思があるなら調教するのは当たり前だよなぁ?」
「ロボットだろうが人語話せる奴はお仕置きだどー!」

 俺とレイさんは瀕死のジャガーノートにひたすら鞭打ち続ける。
 
「よーし、ロボ調教完了!」
「ワン……ワン……何ナリトオ使イクダサイ……」

 ジャガーノートは四つん這いヨツンヴァインになり、俺たちの従順な犬奴隷となったのだ。めでたしめでたし。

「ロボを調教できたのは初めてだな、タツヤさん」
「ふぅ、なんとか片付いたな。あとはあのスイッチを操作すれば電波を止められるはずだ」

 ハイド伍長が機械に近づき、スイッチを操作する。すると、電波塔の稼働は全停止した。

「これでよしっと!」
「案外簡単に電波を止められるんだな」
「これで任務完了だ。さぁ基地に戻ろうぜ」

 任務を終えた俺たちは軍事基地へ帰還し、ハイド伍長の部屋で少し休憩することにした。
 ハイド伍長は俺たちに緑茶グリーンティーを入れてくれた。アメリカの緑茶グリーンティーは地元の緑茶とは一味違うぜ。

「みんな、今日は本当にありがとな! おかげであたり一帯の電波を無くすことができたぜ」
「俺らもハイド伍長と一緒に仕事できて楽しかったっすよ!」
「またいつか一緒に仕事しような!」

 俺たちはハイド伍長から任務の報酬をもらった後、ハイド伍長の部屋を後にした。