第24話 隠れ身の助っ人現る!

 ライナスの不意打ちを受けて瀕死になった俺たち。
 ミカエルだけは不意打ちを避けたものの、ライナス相手には歯が立たず、一方的に痛めつけられていた。

「誰か……助けてくれ!」

 ミカエルは助けを求めるも、俺たちは瀕死で立ち上がることすらできない。
 このまま全滅してゲームオーバーなのか……?

「その辺にしておくんだな」

 何者かの声と共に、どこからか巨大な炎の球体が発射された。

「ぐあっ!?」
 
 ライナスは飛んできた炎の球体が直撃し、球体の爆発と共に大きく吹っ飛ぶ。

(誰か助けに来てくれたのか……?)

 ミカエルも爆発に巻き込まれて軽く吹っ飛ばされたが、救援が来たことに気づいて安心していた。

「なんとか間に合ったな。もう大丈夫だぞ」
「ナイト軍曹!」

 助けてくれたのはフルアーマー軍人のナイト軍曹だ。右手に大型のバズーカを構えている。
 かつてメトロポリスで魔王を黒塗りの高級車でひき殺した時のノリが嘘のように、謙虚で落ち着いた口調だ。

「ちっ! また軍の奴らが邪魔しに来やがったか!」

 ライナスは苛立ちを見せながら立ち上がる。

「話は聞いているぞ。エーリッヒ大佐や軍の兵士たちを襲撃した、ライナスって男はお前だな? 今度は可愛い新入りに手を出しやがって……! タダで済むと思うなよ!」

 ナイト軍曹は途中まで落ち着いた騎士のような態度だったが、ミカエルをあんな目にあわせたライナスへの怒りは隠せなかったようだ。

「どうやらてめぇはあの空軍パイロットと違って実力はあるようだな。……久々に血が騒ぐぜ! それでこそ殺しがいのある奴ってモンだ!」
「掛かって来い! エーリッヒ大佐の仇を取ってやる!」

 ライナスとナイト軍曹は互いに戦闘態勢に入り、武器を構えた。

(よし、今のうちにみんなを安全な場所へ避難させよう。立てるか?)

 ミカエルは瀕死で倒れている俺たちを、ナイト軍曹とライナスの戦いに巻き込まれない場所へ少しずつ運んでいく。
 その一方、ナイト軍曹とライナスは激しい戦いを繰り広げていた。
 先ほどナイト軍曹が不意打ち先制攻撃をライナスに命中させた分、ナイト軍曹が有利だ。
 ナイト軍曹は立ち止まりながらライナスへ砲撃を続け、ライナスはそれを側転回避しながら二丁の銃でナイト軍曹を銃撃する。
 ライナスの銃弾はナイト軍曹の鎧に着弾と同時に爆発したが、ナイト軍曹はビクともしない。

「何!? 効かねぇだと!?」
「俺の鎧は軍の特注アーマーだ。そんな攻撃何とも無いぜ」
「そうか……ならば……!」

 ライナスは別の銃弾を補充し、ナイト軍曹へ向けて発砲した。

「くっ! 貴様、何をした!?」

 ナイト軍曹は自分の鎧に異変が起きたことに気づく。

「俺が作った弾丸は多種多様だ。てめぇの装甲を弱めてやったぜ!」

 この装甲弱体化は一時的なものだが、鉄壁の防御力を誇るナイト軍曹もこれではダメージを受けてしまう。
 ナイト軍曹はパワーと守りは絶大だが、重装備故に移動速度が遅く、敵の攻撃を回避するのは苦手だ。

「これはサプライズだ! 受け取れ!」

 ライナスはナイト軍曹へ向けてお手製爆弾を投げつけ、爆弾はナイト軍曹にぶつかると同時に爆発した。

「ぐあっ! この程度で……!」

 ナイト軍曹はダメージを受けるも、なんとか踏ん張り体勢を維持する。

(ナイト軍曹を助けてやりたいが、下手に出ると足手まといになりそうだ)

 ミカエルは自分より格上の者同士の戦いを目の当たりにし、ただ陰から見守ることしかできなかった。

「その自慢の鎧ごと粉砕してやるぜ」
「それはどうかな? 掛かって来い!」

 ライナスは二丁の銃で起爆性のある弾丸をナイト軍曹へ向けて発砲。
 ナイト軍曹はその弾丸を右手に持っているバズーカを盾にしてガードする。
 弾丸は着弾と同時に爆発するが、バズーカは無傷だ。

「そのバズーカもぶっ壊してやる!」

 ライナスは急いで標的の装甲を弱める銃弾を補充しようとする。

(今だっ!)

 その時、ナイト軍曹は即座にバズーカを構え、砲弾を発射した!
 隙を突かれたライナスは砲弾を避けようとするも、手前に着弾した砲弾の爆発に巻き込まれて吹っ飛んだ。

「クソがっ!」

 ライナスは吹っ飛ばされた直後に爆弾を投げて反撃する。
 一方、ナイト軍曹はそれを撃ち抜くように砲撃していった。
 爆弾は砲弾命中と同時に爆発し、砲弾はそのままライナスへ向かって飛んでいく。
 砲弾はライナスに直撃し、吹っ飛んだライナスは背後の壁に背中から激突した。

(よし、あとはこいつの身柄を拘束して終わりだ!)

 勝利を確信したナイト軍曹はライナスに近づいていくが、ライナスはボロボロになりながらもゆっくり立ち上がる。

「ちっ……またしても失敗するとは……! こうなったら……!」

 ライナスは倒れている俺たちへ向けて銃を向ける。

「おい、何をするつもりだ!?」
「ニトロライトをよこせ。さもないとこいつらの命は無いぜ!」
「やってみろ。その瞬間、お前も死ぬぞ」

 ……え? ナイト軍曹、俺たちを見殺しにするつもりか!?

「……だが、お前もこんなところで死にたくないだろう? マティアス司令官からの命令だ。おとなしく軍についてくれば、お前の今までの行いを許してやろう」
「なんだと……!? てめぇ、今”マティアス”って言ったのか!?」
「あぁ、我らがマティアス・マッカーサー司令官のことだ」
「マティアス・マッカーサー……あの人が軍の司令官だと……?」

 ライナスはマティアス司令官の名前を聞いて動揺している。

「ライナスとマティアス司令官は知り合いなのか?」
「いや……そんなはずは……!」 

 傍で隠れていたミカエルがライナスに問いかけるが、ライナスはあやふやな返答を返してきた。

「……この借りは必ず返すぜ! せいぜい余生を楽しむんだな!」

 ライナスは足元へ向けて銃弾を発砲し、砂嵐を発生させた。
 前回と同じく、俺たちの視界が奪われている隙に逃げられてしまった!

「ふん、何度やっても同じだ。だが次は逃がさないぜ!」

 ナイト軍曹はライナスに逃げられても前向きな様子だ。

「ナイト軍曹、ありがとう! 本当に助かったよ!」
「よしよし、もう大丈夫だからな! ……そういやお前の名前を聞いていなかったな」
「ミカエルだ。ナイト軍曹がいなかったら今頃大変な目にあっていたよ」
「ミカエルか、良い名前だ!」

 ナイト軍曹はミカエルと少し距離を縮められてご機嫌だ。
 そして俺たちはようやく立ち上がれる程度に回復した。

「みんな、大丈夫か?」
「あぁ、俺は大丈夫だぜ」
「オレもなんとか生き延びたが、まさかライナスがあんなに強かったとはなぁ……」
「もう本当にびっくりしたよ……。いきなり後ろから不意打ちとか卑怯でしょ……」

 あんな卑劣な野郎は次こそ調教してホモビモデルに仕立て上げてやらないとなぁ~?

「お前たちも無事で良かった! 俺、実はマティアス司令官にお前たちの護衛を頼まれてやってきたんだ」
「マジかよ? なら遠慮なく俺らと合流してくれればよかったのによォ」
「いや、それだとお前たちの為にならないから……」

 このフルアーマー軍人のナイト軍曹がトロッコで俺たちの後をついてきたのを想像すると、なかなかシュールだぜ。

「ところで、ライナスは結局どうなったんだ?」
「ライナスには逃げられてしまった。詳しいことは基地に戻ってから話そう」
「そうだな、まずは司令室へ報告しに行こう」

 俺たちはナイト軍曹と共に廃坑を後にし、軍事基地へ帰還した。