
キムラ村に戻った俺たちは村長の家へ向かい、山賊の親玉討伐の報告をした。
「約束通り山賊の親玉ガロンを潰してきたぜ」
「本当にありがとう! おかげで村は救われたよ! では約束通り、船のチケットとトームを差し上げよう」
船のチケットとトームをもらった!
これでソフトクリーム島へ行けるようになったぜ。
「村長! 人身売買とかやめてくださいよ本当に!」
「さっさとオレたちについて来いって言ってんだよおおおオイオラァァ!!」
必死に村長に助けを求めるトームを、レイさんが怒涛の殴りで黙らせた。
「それじゃ、俺らは失礼するぜ」
トームを捕獲した俺たちはキムラ村を後にした。
「そういえば、ジョンはどこに行ったのかな?」
ジョンが帰って来ていないことに気づく村長。その時、ジョンが村長の家に帰ってきた。
「ジョン! 無事だったか!」
「……ワン……ワン。」
「……ジョン?」
どうやらジョンの様子がおかしい。
「ママ。俺はあなたの忠実なペットです。いっぱいナデナデしてください」
「ジョン! 一体何があったんだああああ!?」
こうしてキムラ村に平和が訪れたとさ。めでたしめでたし。
俺たちは捕獲したトームをバーに閉じ込める為、ホモの町に戻り、BAR Tatsuyaへ向かった。
これで捕獲すべき残りの脱走者はあと一人だ。
最後の脱走者”ヒデオ”は雪の町ソフトクリーム島にいるぜ。
「雪の町か。寒いのは大嫌いだ……」
「おれも寒いところは嫌だなー。タツヤさんはそんな格好で雪の町へ向かうつもりなの?」
ミカエルとヨウスケは寒いのが苦手のようだ。だが俺はそんな軟弱な男じゃないぜ。
「当たり前だろぉ~? 熱い男は厚着しなくても平気なんだよ」
「そうだそうだ、タツヤさんはそんなヤワな男じゃないぜ」
(絶対風邪引きそうだよ……)
俺たちはソフトクリーム島を目指すべく、港へ向かった。
まだ船のチケットを持ってなかった頃の俺たちは乗船入り口で「おいコラァ! チケット見せろォ!」と門前払いを食らっていたが、今回はすんなり船に乗ることができた。
船は豪華なクルーズ船だ。目的地へ到着するまでの間は乗客たちを調教して暇つぶしするか。密室プレイはたまんねぇぜ。
俺たちは船酔いした乗客、テラスで酒を飲む船乗りなど片っ端から調教していった。
調教したのはもちろん男の乗客だけだ。俺は女に興味ねぇんだよ。
そんなことをしながらしばらく船の中を散策していると、奥の席から激しい物音と男の悲鳴が聞こえてきた。船の中でストリートファイトか?
そこへ向かうと、傷を負ったもじゃもじゃヒゲのおっさん、それを見て「やべぇよ……やべぇよ……」と覚えている青年、そして冷酷な笑みを浮かべる金髪の男がその場にいた。
長くて美しい金髪を持つナイスガイは身長190cm前後の長身、年齢は30代後半くらい、肌の露出がほぼ無いウエスタンガンマンのような服装だが、ガタイは良さそうだ。
こんなナイスガイを見かけたらどうする? 調教するに決まってるダルルォ?
「おっ! あそこに金髪のナイスガイがいるじゃ~ん! 早速調教しに行こうぜ!」
「おい、気をつけろ!」
ミカエルが俺を制止しようとするが、俺は構わず金髪の男の元へ向かう。
「よぉ! お前なかなか良い男じゃないか~!」
俺が金髪の男へ話しかけると、金髪の男は不敵な笑みを浮かべながら振り向いた。
「ほぅ……。俺に話しかけてくるとは良い度胸をしているな」
「ところでさぁ、俺のバーで働いてみない?」
「フン、あいにく俺は一匹狼なんでな。誰かに使われるなんてガラじゃねぇのさ」
あっさり断りやがったなこの野郎。
「まぁ、そんな堅いこと言わないでくれよ! 楽しくやれるように調教してやるからよ!」
「そうだぜ。調教して俺の犬にしてやるぜぇ〜」
「ほぅ、俺とやるってのか? 命を粗末にしないほうが良いぜ?」
金髪の男は笑みを見せつつ威圧的な態度を見せる。
(ねぇ、この人なんかヤバそうだよ……)
(あぁ、そうだな……。この殺気、只者では無い)
怖気づくヨウスケとミカエル。
「タツヤ、今回は引き下がるんだ」
「オォン!? 4人がかりで掛かれば勝てるだろぉ~?」
「とにかくやめるんだ。相手が悪い」
お前それでも暗殺者かよオイ!? と言いたいところだが、暗殺者は直接の殴り合いは苦手だから仕方ないね。
「そこのフードのガキは賢いんだな。てめぇらも見習いな」
「タツヤさん、諦めよう。あの住宅街の忍者の時と同じようになりたくないだろ?」
「お、そうだな……」
金髪の男にナメられたままなのはムカつくが、レイさんまで弱気になってるならここは引いた方がいいな。
「あの……邪魔をしてすみませんでした!」
「分かったらさっさと失せろ」
ヨウスケが怯えた声で金髪の男に謝ったところで俺たちはその場を去った。
今回はあの男を見逃してやったが、いつか強くなってリベンジしたいぜ。
気を取り直して船の散策を再開。しばらくすると船長室にたどり着いた。
俺たちが船長室の扉をそっと開けると、鍵は掛かっておらず、あっさり中に入ることができた。
船長室の中は……なんと船長が顔面蒼白になって苦しそうにしているじゃねーか!
船長の隣にあるごみ箱の中身は……見ない方がいいな。
「ヴォエ! 船酔いで……すっかりダウン……苦しい……」
「船長のくせにこんなユルいんかよ! 俺が背中をさすってやるぜ」
すりすり…… すりすり……
すりすり…… すりすり……
しばらく背中をさすっていると、船長の顔色が元に戻ってきた。
「ふう……ありがとよ。だいぶ楽になったみたいだ」
「人助けできて何よりだぜぇ~」
「もうすぐ船はソフトクリーム島に到着するぞ。そこで降りるなら船の出入り口へ向かってくれ」
「あぁ、分かったぜ」
船長室から出た俺たちは船の出入り口へ引き返して行った。
そしてようやく船は目的地のソフトクリーム島へたどり着いたのだ。
ソフトクリーム島で降りる乗客もいれば、そのまま船に残る乗客もいた。
あの金髪の男は……降りてこないな。あいつは危険な匂いがプンプンするから、ここでお別れできて助かったぜ。
船から降りてソフトクリーム島へ着陸した俺たちだが、到着して早々地獄が待ち受けていた!
「寒っ! なんだこの殺人的な寒さは!?」
「ほら、だから厚着しなよって言ったじゃん……」
「馬鹿な奴め。厚着していてもかなり寒いがな」
「こんな寒さじゃヒデオ探しどころじゃないな。どこかで防寒着をもらえると良いんだが……」
ソフトクリーム島は年中雪が降っている雪国だ。寒い場所なのは分かっていたが想像以上だったぜ。
こんな寒さでずっと外にいたら凍死してしまう! 俺たちは急いで防寒道具を探しに行った。