第6話 魔王を調教する!

 序盤のボスが魔王ってどういうことだよオイ!?
 俺たちは一斉に魔王へ攻撃を仕掛ける。

  ~猛毒の投刃~
 毒を塗った刃を投げつけ、ダメージを与えつつ一定確率で毒状態にする、ミカエルの物理攻撃兼バステスキル。

 素早さの高いミカエルが先手で攻撃を仕掛ける。
 刃は魔王に命中したが、魔王は毒状態にならなかった。

「やはりボスに状態異常は効きにくいみたいだな」

 ミカエルは舌打ちしながら言う。
 続いて俺が魔王に追撃を仕掛けた。

 ~腕縛りの鞭~
 ムチで敵の腕を狙い撃ち、ダメージを与えつつ攻撃力を減少させる、タツヤの物理攻撃兼デバフスキル。

 俺の攻撃は見事魔王に命中した。
 ダメージは少ないが、これで少しは弱体化させることができたはずだぜ。
 その後、レイさんがスタンガンを装着した竹刀で魔王を斬りつける。

「魔王は黙って勇者に倒されろよオイオラァ!」

 激しい電流を帯びたレイさんの竹刀は魔王に直撃した。
 しかし、魔王は俺たちの攻撃を続けて食らっても余裕の表情だ。

「……なるほど、貴様らなかなかやるじゃないか。今度は俺様のターンだ!」

 魔王はマントの中から何かを取り出す。
 出てきたのは、なんと大型のアサルトライフルだ!
 魔王が近代兵器で武装するなんてアリかよォ!?

「この突撃銃で木っ端微塵にしてやるぜ~!」

 魔王はヒャッハーな気分で銃を乱射してきた。
 攻撃範囲はかなり広く、仲間全員がダメージを受ける。
 ねーイタいーもう! イッタいよもう! 攻撃力下げてもこの高威力かよ!?
 そんな中、ヨウスケが痛みに耐えながらリュックからスプレー缶を取り出す。

 ~癒しの踊り-HP回復~
 踊りながらスプレーを撒き、傷を癒すミストで味方全体を回復する、ヨウスケのHP回復スキル。

「そんなハイテクなスプレー、どこで手に入れたんだよ!?」
「おれのニート仲間の一人が作ってくれたんだ」
「いやいや、そいつもはやニートじゃねーだろ!」

 とにかく、おかげで俺たち全員体力を回復できたぜ。
 気を取り直して再び魔王に総攻撃を仕掛けようとしたその時、魔王が再びマントの中から何かを取り出した。

「なかなか良いスプレーを持っているんだな。実は俺様も、とっておきのスプレーを持っているぜ。今度はこいつを食らうが良い!」

 魔王は取り出したスプレー缶で俺たちにスプレーを放ってきた。毒ガスか? それとも催涙スプレーか?
 俺は自分の服で鼻と口を塞ぎながら様子を伺う。苦しくは無い。目も痛くは無い。
 だが、頭部に妙な違和感を感じる。頭が寒い。
 辺りを見回すと、なんとレイさんとヨウスケの頭がハゲていた!
 ということは俺も……?

「タツヤさん、その頭どうしちゃったんだよ!?」
「レイさんこそツルッパゲになってるぞオイ!」
「おれもハゲちゃってる!? そんなの嫌だあああ!!」

 頭をツルッパゲにされた俺たちは深い悲しみに包まれた。

「クックックッ……頭がハゲてしまっては戦いどころではあるまい!」

 魔王は無残な姿になった俺たちを嘲笑っている。
 魔王のくせに卑劣な手を使いやがって! もう許せるぞオイ!
 しかし、頭がハゲてしまった俺たちはやる気ガタ落ちで力が出ない。
 そんな中、フードを被っているミカエルだけは頭が無事だった。
 ミカエルは両手に銃を構えて魔王に狙いを定める。

 ~ラピッドファイア~
 毒を盛った銃弾を連射し、敵に大ダメージを与えつつ高確率で毒・暗闇状態にする。ミカエルの必殺技。

 ミカエルは無数の弾丸を魔王に向けて連射した。
 さすがに魔王だけあって蜂の巣にはならなかったが、結構ダメージは通ったようだ。
 しかも魔王に毒と暗闇の状態異常も掛かってるじゃねーか。さすが暗殺者アサシンだぜ。

「ぐぬぬ……これじゃ前が見えないじゃないか!」

 視界を奪われて焦る魔王。

「魔王の視界は奪ったぞ。あんたたちも脱力してないで後に続け」

 せっかくミカエルが作ってくれたチャンスだが、俺たちはハゲにされたショックで脱力している。
 その時、ヨウスケがもう1つリュックからスプレー缶を取り出した。

 ~癒しの踊り-状態異常回復~
 踊りながらスプレーを撒き、異常を治すミストで味方全体の状態異常を解除する、ヨウスケの回復スキル。

「みんな、これでおれたちの頭が戻るはずだよ!」
「おお! 髪がフサフサに戻ったぜ! 脱毛剤をばら撒く悪い魔王はおしおきだど〜」
「よーし、俺らをコケにしたからには何されるか分かってんだろうなぁ~?」

 ヨウスケが使ったそのスプレーって育毛剤か?
 というか状態異常を治すスキル持ってるならもっと早く使えよ!
 ハゲから元通りに回復した俺たちは一斉に攻撃を仕掛ける。

 ~髪なんか必要ねぇんだよ!~
 散髪刀で敵の頭を丸坊主にして脱力させる弱体スキル。タツヤの必殺技。

「髪なんか必要ねぇんだよ!」

 俺は散髪刀を華麗に操り、魔王の頭を丸刈りにした。
 さっきの借りは返してやったぜ。

「くっ! どういうことだ!? 頭が寒い!」

 魔王は自分が何されたか分かっていないみたいだが、体から力が抜けているのが分かる。
 続いてレイさんが俺の後に続いて追撃する。

~おじさんブロー~
 ひたすらタコ殴りにした後、敵をスタンさせる、レイの必殺技。

「じゃあオラオラ来いよオラァ!!」

 レイさんにボコボコにされた魔王はめまいを起こし、その場で立ちすくむ。
 魔王は毒・暗闇・ハゲ・スタンと多くの状態異常に掛かっていて無防備の状態だ。
 その時、ミカエルがここぞとばかりにナイフで魔王を追撃していた。

「ぐああああ! 急に攻撃力が上がっただと!?」

 魔王は最初のタフさが嘘のように痛がっている。
 まさかミカエルは素早さだけでなく、とんでもない怪力の持ち主だったのか!?

 ~暗殺者の心得~
 状態異常の敵に攻撃する際、与ダメージ増加する、ミカエルのパッシブスキル。

 条件を満たせば火力が上がるスキルの持ち主だったのかよ! アサシンらしいスキルだな。
 ミカエルの怒涛の斬撃により、魔王の体力はゴリゴリ削られていく。
 続いてヨウスケもミカエルの後に続いて追撃しようとする。

「よし! おれの棒術を食らえ! 旋風棍せんぷうこん!」

 どっかで聞いたことある技名だな。
 ヨウスケは目の前で棒を高速回転させる大道芸技を披露した……かと思いきや、手が滑って棒を落としてしまった。

「あ、ごめん! 失敗したわー」
「戦い慣れてないなら無理すんなよ。サポートに徹しろ」

 俺たちは呆れながらヨウスケを見つめる。
 そしてついに魔王に掛かっている状態異常の効果が切れたのか、魔王は体制を立て直した。

「この俺様をコケにしやがって! 貴様ら生きて帰れると思うなよ!」

 魔王は再びアサルトライフルを構え、銃を乱射し始めた。
 さっきよりも連射力が増しており、俺たちの体力はゴリゴリ削られていく。
 痛いんだよおおおお!!!!(マジギレ)
 だが、あれだけの攻撃を受けた魔王の体力は残り僅かのはずだ。
 攻撃を避けられないなら、やられる前にやるしかない!

「お前ら、やられる前に魔王をぶっ倒すぞ! ヨウスケは回復に専念しろ!」
「心得たぜー!」
「了解だ」
「分かった。早く倒してね!」

 ヨウスケは回復ミストを撒きつつ、残りの3人は攻撃に専念した。
 俺はムチで、レイさんは竹刀で、ミカエルは銃で魔王を集中攻撃する。
 激戦の末、銃を乱射していた魔王はついに攻撃の手を止め、地面に跪いた。

「ハッハッハ……この程度の攻撃で……」
「もうこれ以上の抵抗はやめな。そろそろ調教タイム始めるぜ~」
「フフフ……。貴様らは……何もわかっていない……。俺様が生き残るために隠された最後の切り札を……貴様らは知らない……」

 まだ切り札を持ってるのかよ!
 なんだかんだ言ってさすがは魔王だな!

「見せてやるよ! 俺様の最終奥義をな!」

 ちょっと待て! とんでもない最上級魔法とか使うのは勘弁してくれよ!
 俺たちは魔王を調教できるのか!?